青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア』感想 不可能と不可解の織りなす謎

青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア』読み終わった。平成のエラリー・クイーンとも称される青崎有吾の新シリーズ短編もの。動機など<不可解>をメインに解き明かす片無氷雨と、トリックなど<不可能>を解き明かす御殿場倒理の2人の探偵が活躍するという…

加藤元浩『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』感想 本格ガジェット満載の長編ミステリー

加藤元浩『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』読み終わった。※ 読むと真犯人が途中でわかってしまう恐れがあるネタバレが含まれているので注意してください作者の加藤元浩は漫画『Q.E.D.』シリーズの作者で、最近は小説家としても活動している。本作は元ア…

服部まゆみ『この闇と光』感想 再読するとガラリと印象が変わるミステリー

服部まゆみ『この闇と光』読み終わった。この小説をネタバレせずに紹介することは難しい。多少のネタバレを恐れずにいうのであれば、王女レイアとその父である王、そして意地悪なダフネの3人が織りなす耽美なゴシック小説、かと思いきや中盤から終盤に書けて…

城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』感想 - 虚構の上に成り立つ論理【祝アニメ化】

城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』読み終わった。前作『虚構推理 鋼人七瀬』は、虚構の論理で人々を信じ込ませるという興味深い設定で2011年の本格ミステリ大賞を受賞した。その後『虚構推理』は漫画化され、むしろそちらが本編扱いとなり、2019年に…

石持浅海『二千回の殺人』感想 - 商業施設でのテロを題材にしたクライムサスペンス

石持浅海『二千回の殺人』読み終わった。※ 少しだけネタバレを含むので注意。しかしミステリーではないので、記事を読んでも小説の価値は失われないものと思う。文庫化によって改題されているので注意。原題は『凪の司祭』。石持浅海と言えば、特殊環境にお…

P・G・ウッドハウス『ジーヴスの事件簿 才智縦横の巻』感想 - 皇后美智子様がおすすめする英国ユーモア小説

P・G・ウッドハウス『ジーヴスの事件簿 才智縦横の巻』読み終わった。皇后美智子様の84歳のお誕生日のお言葉で、天皇陛下の退位後に何をするかと尋ねられ、答えられたのが探偵小説を読むこと、そしてジーヴスシリーズを読むことだった。 公務を離れたら何か…

北山猛邦『千年図書館』ネタバレ感想 - 優しくて切ないミステリー短編集

北山猛邦『千年図書館』読み終わった。※ 完全なネタバレを含むので注意してください『私たちが星座を盗んだ理由』の続編とも言うべき短編集。前作と同様に、最後の数ページで物語の見方が一変するような仕掛けが施されており、その余韻が読み終わった後に強…

蒼井碧『オーパーツ 死を招く至宝』感想 - ダブル名探偵【このミス大賞受賞作】

蒼井碧『オーパーツ 死を招く至宝』読み終わった。本作は第16回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞している。このミス大賞は、本格ミステリーが大賞を取ることはあまりなく、ミステリーというよりも物語の面白さを重視しているみたいだから最近は避けて…

北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』感想 - ブラックな結末へと反転する鮮やかさ

北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』読み終わった。短編集。どの短編も、ラストの数行で今までの物語が一転するというカタルシスが味わえる。私が、一番好きなのは『妖精の学校』で、ファンタジーのような世界観が最後の一行で否応なしに現実に飛ばされる…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム』ネタバレ感想 - 刊行が早すぎるシリーズ第4弾

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム』読み終わった。死んだ後に自分の死因を推理して正解すれば閻魔堂沙羅に生き返らせてもらえるというミステリーの第4作目。毎シーズンのように新刊が発売されているこのシリーズ。正直刊行スピードが早す…

井上真偽『恋と禁忌の述語論理』ネタバレ感想・解説 - 記号論理学をテーマにした本格理系ミステリー

井上真偽『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』読み終わった。『その可能性はすでに考えた』の井上真偽のメフィスト賞受賞デビュー作で、今回文庫化になった。本書は、数理論理学(記号論理学)をテーマにした本格ミステリである。いやテーマにしたとい…

柾木政宗『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』感想 - 恋に貪欲な女の子と奥手な探偵のライトミステリー

柾木政宗『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』読み終わった。このブログの記念すべき?最初の記事は柾木政宗の『NO推理, NO探偵』だった。本作はその作者の第2作目のミステリーになる。メインの登場人物は、イケメンだけど冴えない探偵の望月迅人、その姉で警察官…

西村京太郎『殺しの双曲線』感想 - 双子を使ったミステリーの傑作

西村京太郎『殺しの双曲線』読み終わった。西村京太郎と言えばサスペンスドラマなどでおなじみのトラベルミステリーの第一人者で、鉄道の時刻表のアリバイトリックなどが有名だ。米寿になっても毎月のように本出していて驚かされる。初期の頃は様々な作品を…

月原渉『首無館の殺人』感想 - 本格らしいガジェットたっぷりの手軽に読めるミステリー

月原渉『首無館の殺人』読み終わった。四角形のキテレツな建物の中で発生する密室首切り殺人事件の謎を解くというとてもオーソドックスな本格ミステリー。古びた洋館、空を飛ぶ生首という怪奇、幽閉された人物、もったいぶった名探偵と本格らしさがこれでも…

カレン・M・マクマナス『誰かが嘘をついている』ネタバレ感想 - 青春群像劇にミステリーの隠し味

カレン・M・マクマナス『誰かが嘘をついている』(原題:One of Us Is Lying)読み終わった。※ 完全なるネタバレが含まれるので、閲覧には注意してくださいサンディエゴの高校で居残りを言い渡された高校生の5人。居残り中に1人が何者かに殺害され、高校生4…

有栖川有栖『幽霊刑事』感想 - ミステリー作家の紡ぐ切ないラブストーリー

有栖川有栖『幽霊刑事』読み終わった。本作の冒頭は刑事の神崎が上司の経堂に「すまん!」と言われ射殺されるというシーンから始まる。須磨子との結婚を間近に控えていた神崎は、その無念さから幽霊となって蘇る。そして経堂はなぜ神崎を殺したのか、なぜ「…

笠井潔『バイバイ、エンジェル』感想 - ミステリーの皮を被った思想書

笠井潔『バイバイ、エンジェル』読み終わった。作者の笠井潔は小説家であるが、本格ミステリの著名な評論家でもある。本格探偵小説の大量死理論などが有名であるが、そういう小難しいことは、私にはよく分からない。そして、それと同時に思想家である。過去…

アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』感想 - 古風なミステリーと現代的なミステリーの融合

アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』(原題:The Magpie Murders)読み終わった。作者のアンソニー・ホロヴィッツはシャーロックホームズシリーズの公式続編を手掛けたり、007シリーズの続編も手掛けたりと、イギリスを代表するミステリー作家であ…

我孫子武丸『8の殺人』感想 - ユーモアの中にも本格推理作家としての気概を感じるデビュー作

我孫子武丸『8の殺人』読み終わった。ゲーム『かまいたちの夜』のシナリオや『殺戮にいたる病』などが有名な我孫子武丸さんだけど、私が好きなのは、ユーモアマシマシの速水三兄弟シリーズである。本作の『8の殺人』は蜂が大好きな社長の建築した8の字の建物…

沢村浩輔『海賊島の殺人』感想 - 少年漫画風海賊物語と孤島ものミステリーの合体

沢村浩輔『海賊島の殺人』読み終わった。前作の『夜の床屋』が大ヒットした沢村浩輔の長編ミステリー。文庫化によって『北半球の南十字星』から改題された。長編とは言ったものの前半と後半で少し読み口が異なる。前半は『ONE PIECE』のような少年漫画風の軽…

青崎有吾『図書館の殺人』感想 - 青春小説としてもヤバみを増す裏染天馬シリーズ第4弾

青崎有吾『図書館の殺人』読み終わった。高校の百人一首研究会の部室を根城いや寝城にしているアニメオタクで頭脳明晰な名探偵・裏染天馬が活躍する本格ミステリーシリーズ第4弾である。シリーズは館ものとは言いつつも、本格ミステリーによく登場するキテレ…

有栖川有栖『インド倶楽部の謎』ネタバレ感想 - 13年ぶりの国名シリーズ

有栖川有栖『インド倶楽部の謎』読み終わった。※ この感想にはネタバレが含まれていますので注意ください。火村英生が探偵として活躍する作家アリスシリーズの中でも、クイーンの国名シリーズをパロディーした国名シリーズは学生アリスシリーズと並んで、平…

新潮文庫NEX『鍵のかかった部屋 五つの密室』感想 - 糸のトリックを集めたアンソロジー

新潮文庫NEX『鍵のかかった部屋 五つの密室』読み終わった。 窓のドアの内側には中から鍵を開け閉めするためのつまみがついている(「クレセント錠」とか「サムターン」と言います)。そのつまみに紐を巻きつけて、もう一方の端を延ばして窓の周囲の換気扇と…

ポール・アルテ『第四の扉』感想 - フランスの端正な本格ミステリー

ポール・アルテ『第四の扉』読み終わった。 謎と驚異の代わりに暴力とセックスが跋扈するこの時代に背を向け、謎解きの名に値する小説を書き続けている作家。本格ミステリを守る最後の砦なのだと申し上げましょう。 これは作中に登場する作家に当てられた台…

早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』感想 - 上木らいちシリーズのファンアイテム

早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』読み終わった。援交探偵上木らいちシリーズの最新作。今までは、シリーズのどの巻から読んでもいいと言っていたが、この本だけは今までに出ているシリーズ*1を全て読破してから読むべきだろう。過去作に出た登場人物などが…

佐藤究『QJKJQ』感想 - 殺人を通して人間を描く試みは成功しているのか?

佐藤究『QJKJQ』読み終わった。猟奇殺人鬼の一家に生まれた少女が、あるきっかけから世界の見方を一変させられ、殺人、そしてそれを通して人間を描いていくミステリーである。第62回江戸川乱歩賞受賞作。有栖川有栖と今野敏が激賞した。最近の江戸川乱歩賞に…

米澤穂信『王とサーカス』感想 - ジャーナリストの本懐

米澤穂信『王とサーカス』読み終わった。『王とサーカス』は太刀洗万智シリーズ(正式名はベルーフシリーズ)の長編ミステリーである。ユーゴスラヴィアからきた少女との経験(『さよなら妖精』)からジャーナリストとなった太刀洗万智が、ネパールのカトマ…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット』感想 - 沙羅シリーズ第3弾

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット』読み終わった。死後の世界で、自分が殺された理由など生前に起きた謎を解明して正解すれば生き返ることができるという『閻魔堂沙羅』シリーズの第3弾。毎シーズン刊行されており刊行ペースが早く、現在5…

倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』感想 - ドルリー・レーンのオマージュだが推理部分が…

倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』読み終わった。※ 各短編の感想には本作および「レーン四部作」のネタバレを含んでいます。注意してください。タイトルから分かるようにエラリー ・クイーンの『ドルリー・レーン四部作』(「Xの悲劇」「Yの悲劇」「Zの悲劇」…

彩坂美月『夏の王国で目覚めない』感想 - ミステリーというよりもジュブナイル小説

彩坂美月『夏の王国で目覚めない』読み終わった。謎の作家である三島加深に惹かれていた高校生の美咲は加深のファンサイトでジョーカーという管理人に、加深の未発表原稿を争奪するミステリーツアーに参加しないかと誘われる。そして「架空遊戯」というミス…