本格ミステリ

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』感想 - 究極ともいえる多重解決ミステリー

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』読み終わった。感想の前にまずはあらすじを書いておく。 嵐で孤立した館で起きた殺人事件!国民的娯楽番組「推理闘技場」に出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。誰もが怪しく思える伏線に満ち…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』感想 - 閻魔堂沙羅シリーズ第2弾

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』読み終わった。ネタバレを含みますので注意してください。閻魔堂沙羅シリーズの第2弾で、死後の世界で閻魔大王の娘である沙羅に、その死者にまつわる謎を推理して正解したら生き返らせてやるという取引を…

竹本健治『涙香迷宮』感想 - 超絶技巧、執念を感じる本格暗号ミステリー

竹本健治『涙香迷宮』読み終わった。『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』のゲーム三部作の名探偵である天才囲碁棋士の牧場智久を主役に据えた「連珠」をテーマにした、いわば『連珠殺人事件』とも言うべきミステリーである。連珠とは、い…

米澤穂信『真実の10メートル手前』感想 - 大人になった太刀洗万智の活動記録

米澤穂信『真実の10メートル手前』読み終わった。本作は『さよなら妖精』の登場人物である太刀洗万智が大人になり、ジャーナリストとなった彼女が主人公で探偵役の本格ミステリ短編集です。『さよなら妖精』はユーゴスラヴィアからやってきた少女のマーヤと…

長沢樹『リップステイン』感想 - 現実的で非現実的な青春本格ミステリー

長沢樹『リップステイン』読み終わった。著者の長沢樹さんは映像制作会社勤務という経歴の持ち主で、映画や芸術に関係する舞台を得意にしている作家さんです。横溝正史ミステリ大賞を受賞した『消失グラデーション』に始まる樋口真由シリーズも、高校の映画…

円居挽『キングレオの冒険』感想

円居挽『キングレオの冒険』読み終わった。京都大学推理研究会出身の円居挽の京都を舞台にした本格ミステリの新作の文庫版です。本作はシャーロックホームズのパロディが全編に組み込まれているのが特徴です。円居挽には「シャーロック・ノート』シリーズが…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』感想 - 心温まる本格ミステリ

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』読み終わった。第55回メフィスト賞受賞作です。最近はメフィスト賞はノベルスじゃなくて講談社タイガで出るんですね。講談社のレーベルのミステリは全部タイガに押し込まれてる気がします。第2弾の感想は以下から。 まあそ…

綾辻行人『黒猫館の殺人<新装改訂版>』感想

綾辻行人『黒猫館の殺人』読み終わった。こちらの感想も書いておこうと思います。綾辻行人の館シリーズの『迷路館の殺人』と同様に作中作の形態が取られているミステリーです。作中作と現在のできごとが交互に章立てられています。作中作の形を取っているか…

綾辻行人『時計館の殺人 <新装改訂版>』感想

綾辻行人『時計館の殺人 』読み終わった。新装改訂版が出ていたので名作を記事に書きたいと思い読みました。改訂版では上下巻に分冊されています。さて内容の話に移りますが、やはり傑作です。『十角館の殺人』から始まる館シリーズの中でも一番の面白さでは…

青柳碧人『上手な犬の壊しかた 玩具都市弁護士』感想

青柳碧人『上手な犬の壊しかた 玩具都市弁護士』読み終わった。 これ私は新シリーズの作品だと思っていたのですが、『玩具都市弁護士』の続編だということに読み終わってから気付きました。したがって、前作を知らなくても何の問題もありません。本作は玩具…

円居挽『語り屋カタリの推理講戯』感想

円居挽『語り屋カタリの推理講戯』読み終わった。 少し設定が特殊なので、まずはあらすじを書くことにします。 舞台は謎解きのために作られた特殊な空間で、そこでプレイヤーが推理合戦をします。推理合戦は動画配信されており、視聴者がいます。プレイヤー…

今邑彩『金雀枝荘の殺人』感想

今邑彩『金雀枝荘の殺人』読み終わった。本格ミステリ定番の館ミステリですが、館そのものに大きなトリックが隠されているわけではないし、吹雪の山荘のようにクローズドサークルが作られるわけでもありません。 過去に起こった連続殺人事件の謎を解くという…

今村昌弘『屍人荘の殺人』感想

今村昌弘『屍人荘の殺人』読み終わった。 ・第27回鮎川哲也賞受賞 ・このミステリーがすごい!2018年版第1位 ・週刊文春ミステリーベスト第1位 ・2018本格ミステリ・ベスト10第1位 ・2018年本屋大賞ノミネート というDHCかと思うほど各賞を総なめにしている…

倉阪鬼一郎『八王子七色面妖館密室不可能殺人』感想

倉阪鬼一郎『八王子七色面妖館密室不可能殺人』読み終わった。 『四神金赤館銀青館不可能殺人』の感想はこちらから 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』の感想はこちらから 『五色沼黄緑館藍紫館多重殺人』の感想はこちらからもちろん今回もバカミス。ただ今回…

倉阪鬼一郎『五色沼黄緑館藍紫館多重殺人』感想

倉阪鬼一郎『五色沼黄緑館藍紫館多重殺人』読み終わった。 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』の感想はこちらから 『四神金赤館銀青館不可能殺人』の感想はこちらから さて今回も倉阪さんらしいバカミスですが、今作は前作2作にも増してバカミス的仕掛けに傾…

岡嶋二人『あした天気にしておくれ』感想

岡嶋二人『あした天気にしておくれ』読み終わった。誘拐ものが得意な岡嶋二人の誘拐ものミステリですが、加えて競馬をテーマにしています。 いわゆる倒叙ミステリで誘拐犯は最初に示されていますが、犯人が示されていても、その犯人が更なる謎に巻き込まれる…

中西智明『消失!』感想

中西智明『消失!』読み終わった。連続殺害事件のミッシングリンクを推理するというミステリですが、二転三転する結末が強烈で驚かされること請け合いだと思います。 1990年の作品ですが今読んでも面白さは変わりません。ただ今このような意外な結末のミステ…

倉阪鬼一郎『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』感想

倉阪鬼一郎『三崎黒鳥白鳥館連続密室殺人』読み終わった。 『四神金赤館銀青館不可能殺人』の続編とも言うべきバカミスで、中身は違いますが同様の趣向が取られています。 メイントリックと(一応伏字にしておきますが)メタトリックの2つのトリックが仕掛けら…

倉阪鬼一郎『四神金赤館銀青館不可能殺人』感想

倉阪鬼一郎『四神金赤館銀青館不可能殺人』読み終わった。 長らく読みたかったのですがどうも絶版になっていてなかなか手に入らなかったのですが、Kindle版が発売されていると知って早速買いました。 バカミスとして有名な作品ですが、確かに脱力もののメイ…

市川哲也『名探偵の証明』感想

市川哲也『名探偵の証明』読み終わった。 第23回鮎川哲也賞受賞作ということで期待して読みましたが少し期待はずれだったようです。 名探偵の一人称で物語を進めて名探偵の生き様や苦悩、そして老いについて色濃く描いていくのが本作の骨子だと思うのですが…

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』感想

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』読み終わった。鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』の続編です。 今作も短編連作ですが、短編が直接的に転落事件に結びついているので長編とみなすこともできます。 春の章 -ハナミズキの咲く頃- 児童養護施設の…

古野まほろ『全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録』感想

古野まほろ『全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録』読み終わった。 なにかと話題の古野まほろさんのセーラー服と黙示録シリーズの新作です。 セーラー服と黙示録シリーズは同じ事件に対してフーダニットとハウダニットとホワイダニットの3つの手法で…

芦辺拓『名探偵・森江春策』感想

芦辺拓『名探偵・森江春策』読み終わった。 これは『少年は探偵を夢見る』の改題になります。名探偵の森江春策が名探偵になるまでの軌跡を時系列で追いかけていく連作短編集です。 ・少年は探偵を夢見る 小学生の森江春策が不思議な体験の謎を解き明かし探偵…

井上真偽『探偵が早すぎる(下)』感想

井上真偽『探偵が早すぎる(下)』読み終わった。 上巻の感想は以下からどうぞ。 www.suiriphilic.com 上巻は犯行計画が3つしかなかったが、下巻ではこの短い300ページもの間に8つの犯行計画があり息もつかせぬ展開になっている。一華を暗殺するのは早い者勝ち…

井上真偽『探偵が早すぎる(上)』感想

井上真偽『探偵が早すぎる(上)』読み終わった。 犯人が事件を起こす前に探偵が犯人を捕まえるという趣向の連作短編集。読者には犯人がわかっていて、探偵がそれを追い詰めるプロセスを楽しむ倒叙ものなのですが、いかんせん犯行が行われてないので犯人を指摘…

坂口安吾『不連続殺人事件』感想

坂口安吾『不連続殺人事件』読み終わった。 この作品には大量の人物が出てくるのですが、登場人物表と家系図は一切なく人物の把握に時間がかかります。なのでここにまとめておきたいと思います。読むときの助けになれば嬉しいです。 矢代寸兵…語り手。 矢代…

新本格30周年記念アンソロジー『謎の館へようこそ 黒』感想

新本格30周年記念アンソロジー『謎の館へようこそ 黒』読み終わった。『白』の感想は下のリンクからどうぞ。 はやみねかおる『思い出の館のショウシツ』 ディリュージョン社シリーズの書き下ろし短編。ミステリとしては軽い飲み口だが特殊設定を上手く使って…

新本格30周年記念アンソロジー『謎の館へようこそ 白』感想

新本格30周年記念アンソロジー『謎の館へようこそ 白』読み終わった。 12人の新本格ミステリ作家が「館」をテーマに短編集を書いており、『白』には6人の短編が収録されています。 またこれ以外にも新本格ミステリ30周年を記念して新本格ミステリのベテラン…

麻耶雄嵩『化石少女』感想

麻耶雄嵩『化石少女』を読み終わりました。 最近の本格ミステリを牽引する旗手の麻耶雄嵩による学園を舞台にした青春?ユーモアミステリ。とはいうものの、さすがは麻耶雄嵩、一筋縄ではいきません。所属している古生物部を廃部にしようとする生徒会への敵意…

菅原和也『あなたは嘘を見抜けない』感想

菅原和也『あなたは嘘を見抜けない』読み終わりました。 2つのパートが交互に繰り返されて物語が進んでいきます。片方のパートではSNSで知り合いニックネームで呼び合う登場人物たちが出てきて、『十角館の殺人』や『密室殺人ゲーム』を思い出しハードルがど…