白井智之『東京結合人間』感想 - グロテスクなほど緻密に計算された特殊設定本格ミステリー

白井智之『東京結合人間』読み終わった。白井智之は処女作となる『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補となり道尾秀介、有栖川有栖の激賞を受けてデビューした作家である。作風はエロありグロテスクありの非常に露悪的な文章が特…

二階堂黎人『増加博士の事件簿』感想 - パズルのようなショートショートミステリー

二階堂黎人『増加博士の事件簿』読み終わった。「大変です、増加博士。事件が発生しました。」 「老体の儂をこんな荒野まで呼び出すことは何事じゃ。」 ジャパリパークへと呼び出された増加博士は、息を切らせながら言った。 「殺人事件です。1人の女性が刺…

連城三紀彦『六花の印』感想 - ミステリ好きだけでなく恋愛小説好きにもオススメできる短編集

連城三紀彦『六花の印』読み終わった。連城三紀彦は本格ミステリ的な巧みな伏線や逆説的などんでん返しなどを多用しながら、繊細で機微に溢れる情感を描いた作家として有名である。惜しくも2013年に亡くなってしまったが、没後、連城三紀彦がミステリー界で…

エラリー ・クイーン『エラリー ・クイーンの冒険』感想 - 本格ミステリ短編のお手本

エラリー ・クイーン『エラリー ・クイーンの冒険』読み終わった。以前から発売されていた短編集なのですが、今回は中村有希の訳で新しく発売されました。今どきの話し言葉に近付いている訳なので読みやすくなっていると思います。エラリー ・クイーンといえ…

早坂吝『誰も僕を裁けない』感想 - 社会派?な上木らいちシリーズ

早坂吝『誰も僕を裁けない』読み終わった。私の大好きな早坂吝さんの上木らいちシリーズの文庫化です。上木らいちシリーズを簡単に説明するとエロミステリーで、しかもミステリーの副菜としてエロが付属しているのではなく、エロがしっかりとミステリーの本…

竹本健治『ウロボロスの純正音律』感想 - 衒学的で遊び心溢れる本格?ミステリー

竹本健治『ウロボロスの純正音律』読み終わった。これでようやくウロボロス三部作を読み終わったわけなんですが、感想記事のサブタイトルを『偽書』ではアンチミステリー、『基礎論』ではウンチミステリーとしていました。そこで何とかミステリーというタイ…

早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』感想 - 探偵は人工知能に取って代わられるか?

早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』読み終わった。最近流行りのAIをテーマにした本格ミステリ小説です。作者の早坂吝さんは私の大好きなミステリー作家さんで、タイトル当てという前代未聞の本格ミステリ『◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件』でデビュー。その後…

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』感想 - 究極ともいえる多重解決ミステリー

深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』読み終わった。感想の前にまずはあらすじを書いておく。 嵐で孤立した館で起きた殺人事件!国民的娯楽番組「推理闘技場」に出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。誰もが怪しく思える伏線に満ち…

竹本健治『フォア・フォーズの素数』感想 - 少年の薄暗い感情を描いた短編集

竹本健治『フォア・フォーズの素数』読み終わった。また竹本健治さんの本の感想かよと思われるかもしれませんが、最近『ウロボロス』の復刊があったためか他の作品も復刊されていたりプッシュされたりしているためで、決して作者本人様にリツイートされて浮…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』感想 - 閻魔堂沙羅シリーズ第2弾

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』読み終わった。ネタバレを含みますので注意してください。閻魔堂沙羅シリーズの第2弾で、死後の世界で閻魔大王の娘である沙羅に、その死者にまつわる謎を推理して正解したら生き返らせてやるという取引を…

竹本健治『ウロボロスの基礎論』感想 - やりたい放題のウンチミステリー

竹本健治『ウロボロスの基礎論』読み終わった。前作『ウロボロスの偽書』の続編です。『偽書』の感想は以下の記事を参照ください。 前回の感想でアンチミステリーについて偉そうに語る立場にないと書きましたが、確かに私にはアンチミステリーという概念の定…

竹本健治『ウロボロスの偽書』感想 - あやふやで茫洋としたアンチミステリー

竹本健治『ウロボロスの偽書』読み終わった。竹本健治さんといえば『匣の中の失楽』のようなアンチミステリーが有名ですが、本作も『匣』のような雰囲気のアンチミステリーになっています。と、書いたのですが実は私は『匣の中の失楽』を読んでいません。そ…

竹本健治『涙香迷宮』感想 - 超絶技巧、執念を感じる本格暗号ミステリー

竹本健治『涙香迷宮』読み終わった。『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』のゲーム三部作の名探偵である天才囲碁棋士の牧場智久を主役に据えた「連珠」をテーマにした、いわば『連珠殺人事件』とも言うべきミステリーである。連珠とは、い…

高林さわ『バイリンガル』感想 - 目新しい試みのあるミステリーだが…

高林さわ『バイリンガル』読み終わった。こちらは第5回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞というミステリ作家の島田荘司さん1人が審査員を務める個性的な賞の受賞作になります。まずはあらすじを引用します。 アメリカの大学都市で30年前に起きた母娘誘拐事…

米澤穂信『真実の10メートル手前』感想 - 大人になった太刀洗万智の活動記録

米澤穂信『真実の10メートル手前』読み終わった。本作は『さよなら妖精』の登場人物である太刀洗万智が大人になり、ジャーナリストとなった彼女が主人公で探偵役の本格ミステリ短編集です。『さよなら妖精』はユーゴスラヴィアからやってきた少女のマーヤと…

山本弘『怪奇探偵リジー&クリスタル』感想 - 古典SFや特撮の薀蓄たっぷりのエンターテイメント

山本弘『怪奇探偵リジー&クリスタル』読み終わった。山本弘さんはミステリー界では『僕の光輝く世界』が本格ミステリ大賞の候補となったことが有名だが、SFの分野では、そのはるか昔から著名な作家であり、『去年はいい年になるだろう』では星雲賞を受賞して…

長沢樹『リップステイン』感想 - 現実的で非現実的な青春本格ミステリー

長沢樹『リップステイン』読み終わった。著者の長沢樹さんは映像制作会社勤務という経歴の持ち主で、映画や芸術に関係する舞台を得意にしている作家さんです。横溝正史ミステリ大賞を受賞した『消失グラデーション』に始まる樋口真由シリーズも、高校の映画…

円居挽『キングレオの冒険』感想

円居挽『キングレオの冒険』読み終わった。京都大学推理研究会出身の円居挽の京都を舞台にした本格ミステリの新作の文庫版です。本作はシャーロックホームズのパロディが全編に組み込まれているのが特徴です。円居挽には「シャーロック・ノート』シリーズが…

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』感想 - 心温まる本格ミステリ

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』読み終わった。第55回メフィスト賞受賞作です。最近はメフィスト賞はノベルスじゃなくて講談社タイガで出るんですね。講談社のレーベルのミステリは全部タイガに押し込まれてる気がします。第2弾の感想は以下から。 まあそ…

綾辻行人『黒猫館の殺人<新装改訂版>』感想

綾辻行人『黒猫館の殺人』読み終わった。こちらの感想も書いておこうと思います。綾辻行人の館シリーズの『迷路館の殺人』と同様に作中作の形態が取られているミステリーです。作中作と現在のできごとが交互に章立てられています。作中作の形を取っているか…

綾辻行人『時計館の殺人 <新装改訂版>』感想

綾辻行人『時計館の殺人 』読み終わった。新装改訂版が出ていたので名作を記事に書きたいと思い読みました。改訂版では上下巻に分冊されています。さて内容の話に移りますが、やはり傑作です。『十角館の殺人』から始まる館シリーズの中でも一番の面白さでは…

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』感想

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』読み終わった。感想を書きたいと思います。まず麻耶雄嵩と言えば日本の本格ミステリの旗手とも言える作家で、今まで多数の本格ミステリ史に残る作品を出してきた。例えば、無謬の探偵メルカトル鮎が登場する『メルカトル鮎シリ…

柳広司『贋作『坊っちゃん』殺人事件』感想

柳広司『贋作『坊っちゃん』殺人事件』読み終わった。夏目漱石の『坊っちゃん』を底本として、その世界観を受け継ぎミステリーへと仕立て上げたパスティーシュミステリーである。本作では坊っちゃんと山嵐が東京に戻った直後に起こった赤シャツの自殺が本当…

青柳碧人『上手な犬の壊しかた 玩具都市弁護士』感想

青柳碧人『上手な犬の壊しかた 玩具都市弁護士』読み終わった。 これ私は新シリーズの作品だと思っていたのですが、『玩具都市弁護士』の続編だということに読み終わってから気付きました。したがって、前作を知らなくても何の問題もありません。本作は玩具…

円居挽『語り屋カタリの推理講戯』感想

円居挽『語り屋カタリの推理講戯』読み終わった。 少し設定が特殊なので、まずはあらすじを書くことにします。 舞台は謎解きのために作られた特殊な空間で、そこでプレイヤーが推理合戦をします。推理合戦は動画配信されており、視聴者がいます。プレイヤー…

グレッグ・イーガン『祈りの海』感想

SF

グレッグ・イーガン『祈りの海』(原題:Oceanic and Other Stories)読み終わった。しばらくぶりの更新ですが、サボってたわけではなく読むのに時間がかかったのと、読む時間が取れなかったのが原因です。本作はアイデンティティーをテーマにしたような短編…

今邑彩『金雀枝荘の殺人』感想

今邑彩『金雀枝荘の殺人』読み終わった。本格ミステリ定番の館ミステリですが、館そのものに大きなトリックが隠されているわけではないし、吹雪の山荘のようにクローズドサークルが作られるわけでもありません。 過去に起こった連続殺人事件の謎を解くという…

ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』感想

ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(原題:The Corn Maiden and Other Nightmares)読み終わった。 ジョイス・キャロル・オーツは村上春樹とともにノーベル文学賞の候補に挙げられてるアメリカの女性作家です。ミステリ…

ダグラス・アダムス『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』感想

ダグラス・アダムス『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(原題:Dirk Gently‘s Holistic Detective Agency)読み終わった。Netflixでドラマ化もされているこの本を一言で言えば、混沌としたコメディSFミステリである。ダグラス・アダムスはモンティ・…

今村昌弘『屍人荘の殺人』感想

今村昌弘『屍人荘の殺人』読み終わった。 ・第27回鮎川哲也賞受賞 ・このミステリーがすごい!2018年版第1位 ・週刊文春ミステリーベスト第1位 ・2018本格ミステリ・ベスト10第1位 ・2018年本屋大賞ノミネート というDHCかと思うほど各賞を総なめにしている…