七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』感想

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』読み終わった。鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』の続編です。

今作も短編連作ですが、短編が直接的に転落事件に結びついているので長編とみなすこともできます。

 

春の章 -ハナミズキの咲く頃-

児童養護施設の少年である界が、なぜ彼の母親に崖から突き落とされたかを推理する。伏線がはっきりと明示されているのでミステリ自体は分かりやすいですが、海王さんの『希望』に関する意見は考えさせられます。

 

夏の章 -夏の少年たち-

サッカーのプレイヤー11人が消失する謎。トリックはいくぶん非現実的ではあるが、十分な伏線は張られていてミステリとしての瑕疵はない。

 

初秋の章 -シルバー-

再生されないCDの謎と寄せ書きが盗まれた理由の謎。それぞれのトリック自体は一発ネタっぽいが、合わせ技で上手く処理している。

 

晩秋の章 -それは光より早く-

子供を無理やり連れ戻そうとする父親から子供を守るサスペンス仕立てのミステリ。これも伏線が分かりやすいので仕掛け自体にはすぐに気付くと思われるが、新幹線のところは気付けなかった。悔しい。

 

以上の章と冬の章が交互に展開する構成になっている。

冬の章

屋上からの転落事件の謎。これもこんなもんかあと思っていたら372ページで、いきなりグーで殴られたような衝撃を受けた。

見返してみると確かに私が勝手に思い込んでいただけである。伏線の貼り方が尋常ではなく上手い。構成の妙もある。

かなりの綱渡りのこれを成立させるためには、全身全霊を注がないと無理だろう。作者が寡作なのも頷ける。一作一作に全力を尽くす作者には尊敬の念を抱かざるを得ない。

しかし大仕掛けのせいで悲痛なストーリーになってしまった。それでも、悲痛の中にも希望を感じさせる結末がある。願わくは七海学園シリーズの続編を読みたい。

 

本作だけでも面白いが是非前作に続けて読んでほしい。驚きが何倍にも膨れ上がる。

七つの海を照らす星 (創元推理文庫)
 

さまざまな理由で家庭では暮らせない子どもたちのための養護施設・七海学園。勤めて三年目の保育士・北沢春菜は慌ただしくも生き生きと職務に励んでいた。そんな日々の中、初冬のある日に学園の少年少女が通う高校の文化祭で起きた校舎屋上からの転落事件が暗い影を落とす。事故か、自殺か、それとも?鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』に続く、清新な本格ミステリ