直木賞を受賞した門井慶喜さんのオススメ小説5選

第158回芥川賞直木賞が発表され、芥川賞には石井遊佳さんの「百年泥」と、若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」の2作、直木賞は門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」が選ばれました。

門井慶喜さんはオール讀物推理小説新人賞受賞者でミステリに定評がある作家です。とくに作者は美術、歴史など多くのことに精通しており、その博覧強記さから紡がれる物語や謎が魅力の作家さんだと思っています。

私は門井慶喜さんの小説、特にミステリが好きで8割方は読んでるのでいくつかオススメの小説を紹介したいと思います。

 

天才たちの値段

天才たちの値段 美術探偵・神永美有 (文春文庫)
 

美術探偵・神永美有シリーズの第一作。絵画に関する謎を、舌に感じる味だけで心眼を見極める神永美有が解き明かしていく絵画ミステリ。ボッティチェリの贋作や横に寝転がった涅槃図など、美術に造詣の深い作者らしい確かな知識に裏打ちされた極上の謎が読者を楽しませる。

門井慶喜さんのすごさは創作なんだけど、それを感じさせないリアリティがあることだと思います。読んでいるとどこまでが真実(史実)でどこからが創作なのか分からなくなります。

美術に知識がない人でも大丈夫です。私もまったくちんぷんかんぷんです。神永美有シリーズは3作まで出版されています。

 

人形の部屋

人形の部屋 (創元推理文庫)

人形の部屋 (創元推理文庫)

 

門井慶喜さんのなかで一番好きな小説。 専業主夫の敬典が娘のつばさと、食卓に起きる小さな謎を解明していきます。舞台が一般家庭になったとしても門井慶喜さんらしい、溢れんばかりの知識が炸裂します。若干ペダンチックではありますが、薀蓄がしっかり謎と絡んでいて、どんどん読み進められます。

ほっこりとした素敵なストーリーは、ミステリとしての質も勿論、家族小説としても傑作だと思います。

 

 

おさがしの本は

おさがしの本は (光文社文庫)

おさがしの本は (光文社文庫)

 

こちらはビブリオミステリ。 『ビブリア古書堂の事件手帖』のように書物についての謎を解き明かすミステリです。刊行はこちらのほうが早いですが。主人公の和久山隆彦は図書館のレファレンス・カウンターに勤務するが、財政難による図書館の廃止が取り沙汰される。廃止を阻止しようとする隆彦の闘いが、書物にまつわる謎とともに語られるというストーリーになっています。

内容は『ビブリア古書堂』よりも少し専門的で、謎解きをしようとすると本の知識がより問われる内容になっています。でも読書家だけが楽しめる本と言うわけではありません。私自身ミステリ以外はほとんど読まないがめちゃくちゃ楽しめました。

図書館の廃止という社会派のような側面も少しは含んでいるかもしれません。こちらも『この世にひとつの本』と『小説あります』など続編に近い本が刊行済みです。特に後者はオススメです。

小説あります (光文社文庫)

小説あります (光文社文庫)

 

 

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち (講談社文庫)
 

最後に少し変わり種を。英才教育によって弁論技術を極めた生徒たちが新任の教師の能瀬雅司に難題を投げかけ、それをなんとか論理で証明するというストーリー。その難題が「テレポーテーションが現実に可能であることを証明せよ」「海を山に、山を海に変えられることを証明せよ」「ほんとうにサンタクロースがこの世にいることを証明せよ」と本当に難題だから面白い。弁論術とか言ってますが詭弁術に近いかもしれません。

論理をテーマにした連作短編ミステリで、ミステリのキモである論理性をこれでもかと全面に押し出した小説だと言えます。まるで評論を読んでるかのような文章が続くが、『言葉』を巧みに使った解答が非常に鮮やかです。

 

門井慶喜さんの初期の小説には少し難解な単語が使われているので意味がわからないときもあるかもしれませんが、それは言葉を大事にする作者が、細かなところまで言葉の意味をしっかり選んだ結果だと思います。しかし躊躇うことはなく、門井さんの紡ぐ魅力的な謎と豊富な知識に身を委ねて素敵な時間を楽しみましょう。