中西智明『消失!』感想

中西智明『消失!』読み終わった。

連続殺害事件のミッシングリンクを推理するというミステリですが、二転三転する結末が強烈で驚かされること請け合いだと思います。
1990年の作品ですが今読んでも面白さは変わりません。ただ今このような意外な結末のミステリもかなり多いのでメイントリックの1つは分かりやすいかもしれません。私は最初の1割くらいを読んだくらいで気付いてしまいましたが、その後は伏線の張り方の妙味を感じながら読んだので、結局は楽しく読めました。
一方、更なるどんでん返しは全く予想していなかったのでミステリとしての驚きも存分に味わうことができました。
あまり内容を書きすぎるとどうしてもネタバレになってしまうのでここでとりあえず紹介はやめて、後半にネタバレ感想を書きたいと思います。

7編のショートショートとその掌編をテーマにした短編が付録されています。
ショートショートはバラエティに富んでおり、それぞれが奇妙な味で単品としてもなかなか面白いです。それを纏め上げた短編も良く出来ています。ただショートショートは短編と無関係に作られた後付けのものらしいので、『消失!』のような本格らしい緻密さには少し及んでいません。

以降がネタバレ感想になります。






実際は殺されたのは人ではなく犬だったというのは序盤で分かりやすいと思います。作者もこれはサブトリックのように考えていたのが後書きで分かります。
メインはやはり3件の被害者が全て同一の犬であったというところでしょう。これは今までのミッシングリンクになかった新しい回答で1990年当時には強烈な新鮮さと驚きだったでしょう。
そしてもうひとつ実は犯人は探偵だったというのがあるのですが、これは正直蛇足だと思っていました。犯人がオイさんでも小説全体に何の問題もないですし、著者が嫌う「ショッカー型叙述トリック」ではないかと思ったからです。
ただ黄金の羊毛亭様の感想を見て、少し気持ちが変わってきました。確かに犯人は探偵だったという方が小説の出来が良くなるのは間違いないと思います。

高塔市―赤毛の人々が数多く住む奇妙な街で、その事件は起こった。美しい赤毛の持ち主ばかりを次々に殺害し、忽然と「消失!」する黒ずくめの男の謎。痕跡ゼロ、関連性ゼロの完全犯罪に名探偵新寺仁が挑む!ミステリマニアの間で伝説と化していた本書が今また甦る。