岡嶋二人『あした天気にしておくれ』感想

岡嶋二人『あした天気にしておくれ』読み終わった。

誘拐ものが得意な岡嶋二人の誘拐ものミステリですが、加えて競馬をテーマにしています。
いわゆる倒叙ミステリで誘拐犯は最初に示されていますが、犯人が示されていても、その犯人が更なる謎に巻き込まれるので、ミステリとしてのフーダニットやホワイダニットとしての側面も持ち合わせています。
倒叙ミステリはどう解決するんだというサスペンスのようなハラハラ感を楽しむ作品ですが、そのスリルも失われていません。そして誘拐ものに重要な誘拐犯と警察のコンゲームのような知恵比べも見ものです。本作はそれに加えて、誘拐犯を惑わす犯人との知恵比べもあるので息つく暇がありません。私も夢中で読み進めてしまいました。

そしてミステリとしても競馬というテーマを存分に生かし切ったトリックが使われており、指摘するような欠点が特に見当たらない非の打ち所がない作品になっていると思います。
まさに岡嶋二人の面目躍如、誘拐ものの歴史に残る傑作といって問題ないでしょう。

以下結末に少し触れるネタバレがあります。





結末は最終的に犯人が捕まることを予感させて終わります。勧善懲悪でミステリの幕引きとしては問題ないのですが、個人的には犯人は逃げ切って欲しかった、もしくはリドルストーリー的な終わり方をして欲しかったと思います。犯人に感情移入してしまったのが主な理由ですが、これだけ振り回されたんだからセシアには可哀想ですが最後は安らぎの日々を与えてあげてほしいというのは贅沢でしょうか。

あした天気にしておくれ (講談社文庫)

あした天気にしておくれ (講談社文庫)

競馬界を舞台にしたミステリーの最高傑作。北海道で3億2千万円のサラブレッド「セシア」が盗まれた。脅迫状が届き、「我々はセシアを誘拐した」で始まる文面は、身代金として2億円を要求してきていた。衆人環視のなかで、思いもかけぬ見事な方法で大金が奪われる。鮮やかなトリックが冴える長編会心作。