今邑彩『金雀枝荘の殺人』感想

今邑彩『金雀枝荘の殺人』読み終わった。

本格ミステリ定番の館ミステリですが、館そのものに大きなトリックが隠されているわけではないし、吹雪の山荘のようにクローズドサークルが作られるわけでもありません。
過去に起こった連続殺人事件の謎を解くというストーリーで推理の流れを楽しむ小説になっています。『狼と7匹の子ヤギ』を見立てにした殺人とそのトリックは、なかなか良くできていて面白いです。
後半に向かって尻上がりにサスペンス的スリルが増加していき、最後に怒涛の真相が明らかになるのも物語にグッと引き込まれます。

霊感を持った少女が出てきて、ホラーのテイストもあるのですが、文体が軽いのと基本的に過去の事件を推理するというストーリーのせいかあまり緊張感がありません。テイストだけで言えば綾辻行人の名作『霧越邸殺人事件』に近いのですが、読んだ印象は全く異なるものになるでしょう。
物語全体で10件以上の殺人事件が起きているので、もう少しおどろおどろしく書いても良かったのではと思います。

以下、ほとんど内容に影響のないネタバレ感想です。






過去の事件がベースになっているのでどうしても推理が予想に近いものになってしまうのは致し方のないことです。しかしながら最初のプロローグのおかげで読者にとってはフェアになっているところが上手い。逆に物語のサプライズ性は低くなりますが、これがあることでミステリとしての完成度はぐんと高くなっていると思います。
読み終わった後に再びプロローグを読み返してみるといいと思います。またプロローグを読んだ後に数日置いて、見返したら思い出すけど内容自体は諳んじれないくらいになったら本編を読み始めてもいいかもしれません。

70年近くも昔の奇妙な三つの死。昨年の冬、完璧に封印された館で発見された、不条理きわまる六つの死。…過去に9人もの命を奪った“呪われた館”を今また6人の男女が、警察も見放した謎を解明すべく訪れた。推理行の果てに浮かびあがる戦慄の犯人像、そして新たなる惨劇。恐怖と幻想の本格ミステリー。