円居挽『語り屋カタリの推理講戯』感想

円居挽『語り屋カタリの推理講戯』読み終わった。
少し設定が特殊なので、まずはあらすじを書くことにします。
舞台は謎解きのために作られた特殊な空間で、そこでプレイヤーが推理合戦をします。推理合戦は動画配信されており、視聴者がいます。プレイヤーは5W1Hにまつわる6つの謎を揃えればゲームクリアとなり、好きな願いを叶えられるというものです。

つまり、現実には起きないような特異な空間で起きる殺人事件の謎を解くというミステリになっています。そこで、フーダニット、ハウダニットホワイダニット、ウェンダニット、ウェアダニット、そしてワットダニットの6種類の謎が出題されます。ヒロインの少女は推理初心者で、その少女にカタリという青年が推理講義をするというストーリーになっています。

似たような小説で言えば、古野まほろの『全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録』でしょう。これも謎解きのために作られた特殊な空間での謎解きとミステリ講義が一体となったミステリですし、フーダニット、ハウダニットホワイダニットの名手3人が謎解きをします。

本作は珍しいウェンダニット、ウェアダニット、ワットダニットという言葉が使われていますが、いつ?やどこ?はアリバイ工作のことですから、そんなに複雑なものではありません。

ミステリ談義はそこまでレベルの高いものではなく、使われているトリックも基本的なものが多いので、ミステリの初心者向けにとてもいい作品だと思います。逆にミステリをかなり読んでいる人には少し物足りなさが残るのではないでしょうか。

それでは個別に短編を見ていきます。以下少しだけネタバレします。本質には触れませんので小説の面白味は失われないと思いますが、閲覧には注意してください。










フーダニット・クインテット
オーソドックスな犯人当てです。カメラマンが犯人というのは他の小説にも作例があるので真新しいものではありませんが、そこからさらに一捻りしています。合わせ技で一本といったところでしょうか。


ハウダニット・プリンシプル
密室からの脱出の謎です。多数の作例があるのですが、これも一捻りを繰り出しています。もう一つのトリックの方も実は結構有名なものですが、この2つを合体させるというのは面白いです。

ワイダニット・カルテット
顔のない死体というこれまたよくあるパターンですが、セオリーから少しズラしたような解答が鮮やかです。ただ若干何が起きてるのかわかりにくいのが、このパターンの玉に瑕ですね。

ウェアダニット・マリオネット
水中に閉じ込められた人間がどうやって死んだかという謎。特殊設定は面白いのですが、トリックは微妙。実際あの状態になったらすぐ気付くと思いますけどね。

ウェンダニット・レクイエム
犯行時間が問題になる謎とは言ったものの、推理の流れが結局フーダニットになっちゃってるのは残念。探偵と犯人の対決は良いのですが、最後はあからさまな新証拠に頼らざるを得ないのが厳しい。まあ短編ではなかなか難しいですね。

ワットダニット・デットエンド
これが一番微妙なんです。最後に持ってきたからにはデカい花火を打ち上げてくれるのかと思いきや1年前の湿気った線香花火かと思うほどのしょぼさ。なんだか尻つぼみです。この章が強烈だったら小説全体の評価もグンと上がるのですが。