綾辻行人『黒猫館の殺人<新装改訂版>』感想

綾辻行人黒猫館の殺人<新装改訂版>』読み終わった。こちらの感想も書いておこうと思います。

綾辻行人館シリーズの『迷路館の殺人』と同様に作中作の形態が取られているミステリーです。作中作と現在のできごとが交互に章立てられています。

作中作の形を取っているからには、その作品の中に何か企みがあることはまあ明らかかと思います。そして本作はかなり分かりやすい仕掛けかなとは思います。勘のいい読者であれば序盤から真相に気づいてしまうのではないかと思います。

ただそれは仕掛け自体が陳腐とかそういう理由ではなくて、伏線がしっかり貼ってあることに起因するものです。作中作というネタを使ったとしても可能な限りフェアであろうとする著者の姿勢に脱帽です。

そして最大のトリックが明かされた後に解かれる密室殺人の謎がまた素晴らしい。このトリック自体は全く珍しくもないのですが、大仕掛けと組み合わせることによって意外性が一気に増幅します。ありきたりなものもアイデア次第でこんなにうまく料理できるんですね。

メイントリックもある作品のオマージュ(作品内に記述あり)なのですが、屋根裏から性行為を覗き見るシーンやポーの『黒猫』など様々なシーンからインスパイアを受けているのではというシーンが作中作にあります。詳しくは書けませんが、それも伏線の一部になっているのかもしれません。

新本格ミステリらしい遊び心に富んでながらシンプルに面白い傑作です。

6つめの「館」への御招待―自分が何者なのか調べてほしい。推理作家鹿谷門実に会いたいと手紙を送ってきた老人はそう訴えた。手がかりとして渡された「手記」には彼が遭遇した奇怪な殺人事件が綴られていた。しかも事件が起きたその屋敷とはあの建築家中村青司の手になるものだった。惨劇に潜む真相は。