円居挽『キングレオの冒険』感想

円居挽キングレオの冒険』読み終わった。京都大学理研究会出身の円居挽の京都を舞台にした本格ミステリの新作の文庫版です。

本作はシャーロックホームズのパロディが全編に組み込まれているのが特徴です。円居挽には「シャーロック・ノート』シリーズがあるようにシャーロックホームズをこのよく愛しているのが分かります。文庫の表紙もシャーロックホームズのオマージュですね。

本作ではシャーロックホームズではなくキングレオが名探偵役、そして天親大河がワトソン役となりシャーロックホームズの事件に類似した事件の謎を解きます。またホームズだけでなく、カーが生み出した名探偵、ギデオン・フェルのオマージュキャラクターも登場し、キングレオと対決を繰り広げる。

またモリアーティー役とも言うべき黒幕ポジションには城坂論語という『ルヴォワール』シリーズに登場したキャラと同名のキャラが登場します。円居挽のファンにとっては垂涎の作品だろう。

各短編を見ていく。

赤影連盟
元ネタは『赤毛連盟』。殺人の謎、未来予知のされた手帳の謎、大量の電源タップを持った男の謎、キングレオの唯一の挫折など色々な事象が最後には綺麗に収束する。

踊る人魚
元ネタは『踊る人形』。学生に蔓延している『踊る人魚』と呼ばれる違法ドラッグの暗号の正体とは?普通の暗号もののような暗号文がどーんと出されて探偵がうーんうーんと唸るような作品ではなく文中にさりげなく存在しているのが上手いです。

なんたらの紐
元ネタは『まだらの紐』。シナリオはまだらの紐と同じで、密室で姉が殺されたがその時に「なんたらの紐…」というダイイングメッセージを残した。そのなんたらの紐とはなにか?どうやって姉は殺されたかというハウダニット。紐の意味の方が若干脱力もので、トリックも一発ネタっぽいですが、ホームズのオマージュとして読むと面白い。本作は、以降に続く短編の問題提起としての役割もこなしています。

白面の貴公子
元ネタは『白面の兵士』。大河がメインの探偵役となり、大河の妹の想い人の正体を探る。足で稼ぐ探偵の雰囲気が強い作品だが、大河と城坂論語の言葉の応酬や真犯人との緊迫の通話が見もの。しかし真犯人がこんなにもあっけないとは…

虚堂の偏屈家
元ネタは『ノーウッドの建築家』。和製ギデオン・フェルこと河原町義出臣とキングレオの推理合戦がメインの短編。この形式は『ルヴォワール』シリーズにある双龍会という私的裁判と似た設定で、論理で相手を説き伏せる事に主眼が置かれています。本作は城坂論語の思惑もあり事態はさらに複雑化。しかしキングレオの華麗な推理によって決着。意外な犯人とどんでん返しも印象的な作品です。

京都の街で相次いで起きた殺人事件。 なぜかすべて、シャーロック・ホームズ譚を模していた。 解決に乗り出したのは、日本探偵公社の 若きスター・天親獅子丸と、助手の大河。 大河は獅子丸をモデルにした『キングレオ』シリーズの スクリプトライターでもあった。 無関係に思われた事件を追っていくと、 謎の天才犯罪者の存在が浮かびあがってくる。 エスカレートする犯人の挑発。 獅子丸はついに、師である 老獪な名探偵と対決することに!