竹本健治『ウロボロスの基礎論』感想 - やりたい放題のウンチミステリー

竹本健治ウロボロスの基礎論』読み終わった。前作『ウロボロス偽書』の続編です。『偽書』の感想は以下の記事を参照ください。

前回の感想でアンチミステリーについて偉そうに語る立場にないと書きましたが、確かに私にはアンチミステリーという概念の定義を決定し、そのミステリーがアンチミステリーに属するのかどうか判断することはできません。しかしながらウンチミステリーならば分かります。「うんこが作中にこれでもかと登場するミステリー」のことでしょう。『基礎論』は一点の曇りもないウンチミステリーです。


上巻あらすじ

京都大学ミステリ研究室から始まった、推理小説マニア垂涎の蒐集本上に大便が置かれるという“うんこ事件”の謎。実名で登場するのは綾辻行人笠井潔法月綸太郎麻耶雄嵩etc.並行して語られる麻生家連続殺人事件というミステリ。混迷する眩暈と戦慄の物語。これは「新本格ミステリ」シーンの二次創作なのか!?

下巻あらすじ

本の上に“排泄物”を残していく“うんこ事件”が、山口雅也新保博久笠井潔らの家で次々と発生する。法月、綾辻、麻耶、有名作家が物語中に突如原稿を混入し謎は深まる一方。竹本の周辺に頻繁に現れる杉田朋江は何者なのか?交錯する麻生邸ミステリその行方は?世界は擾乱され朦朧胡乱の淵に転落する。


本作は、有名作家らの希少本の上にうんこを残していくといううんこ事件と、麻生邸における殺人事件の謎、前作『偽書』にも登場した杉田朋江と名乗る女性の正体の謎、さらには牧場智久(ゲーム三部作や涙香迷宮の名探偵)や矢吹駆(笠井潔の小説における名探偵)なども登場し、それらが複雑曖昧模糊として絡んでいくというミステリーです。

普通のミステリーでしたら「最後に」綺麗に謎解きがなされるのですが、明かされるのはごく一部の謎で、他の謎は放置されたまま小説は「終了」します。『連載第一回』の最初からミステリー論がこれでもかとぶち込まれ、読者を馬鹿にするところや、下巻の文庫本で60ページにも渡る量子力学相対性理論および宇宙の創世に関する概説など、絶対万人受けしないだろうなという内容が小説に組み込まれているかと思いきや、綾辻行人麻耶雄嵩らが書いたとされる文章や作者や小野不由美さんの描いた漫画までもが挿入され、『偽書』に負けず劣らず混沌とした小説になっています。

と思ったら結末でいくつかの謎が面白いトリックを使ったり伏線を回収したりして端正に?解決するから侮れない。それも含めてバーリトゥード(なんでもあり)でやりたい放題な小説なんでしょう。

私は結構楽しく読めました。ただそれは私が「優秀な読者」だからではなく、単に衒学的で雑多な情報の集合が好きだからであり、この章の意図は?と聞かれると閉口してしまうので小説の考察などできません。

前作の『偽書』と『基礎論』とは「解析接続」によって繋げられたフィクション(虚数)とノンフィクション(実数)のような関係にあり『基礎論』の方が現実の出来事が多い(気がしている)が、当然『基礎論』もフィクションなので、『ウロボロス』は終わりもしないが始まりもしない、とさっき思い付いた解説もどきを残しておきます。『偽書』を読まなくても楽しめますが、読んだ方が楽しめると思います。

ウロボロスの基礎論 上 (講談社文庫)

ウロボロスの基礎論 上 (講談社文庫)

ウロボロスの基礎論 下 (講談社文庫)

ウロボロスの基礎論 下 (講談社文庫)