木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』感想 - 閻魔堂沙羅シリーズ第2弾

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』読み終わった。ネタバレを含みますので注意してください。

閻魔堂沙羅シリーズの第2弾で、死後の世界で閻魔大王の娘である沙羅に、その死者にまつわる謎を推理して正解したら生き返らせてやるという取引を持ちかけられ、10分で推理するというミステリです。第1弾の感想は以下の記事を参照ください。

「閻魔堂へようこそ」。閻魔大王の娘・沙羅を名乗る美少女は浦田に語りかける。元甲子園投手の彼は、別荘内で何者かにボトルシップで撲殺され、現場は密室化、犯人はいまだ不明だという。容疑者はかつて甲子園で共に戦ったが、今はうだつのあがらない負け犬たち。誰が俺を殺した?犯人を指摘できなければ地獄行き!?浦田は現世への蘇りを賭けた霊界の推理ゲームへ挑む!

1作目はミステリとしてだけでなく、ホロリと感動させるようなハートウォーミングな短編が多かったのですが、今回は少しブラックな面が出ています。というのも前作での被害者は、生前に善行を積んでおり沙羅の判定によると「天国行き」になる人が多かったのですが、今回の被害者は生前の行いが悪く、沙羅にも「地獄行き」を言い渡されているような人が多いです。

このため、生き返らせた後も順風満帆な人生とはいかない結末になっています。特に2話は強烈。前作から読後感をガラッと変えてきたところは評価できますが、刊行スピードが早すぎるせいかミステリの部分は少し物足りないのと、同じような内容を繰り返している部分があるのが気になります。ページ数を稼ぐためでしょうか。では各短編の感想へ。


第1話 武部健二 43歳 刑事 死因・刺殺
トリックは悪くないんですが、容疑者のアリバイが確固たるものになりすぎていてアリバイトリックだと誤認させるような余地があまり多くないため、犯人は10分推理するまでもなく、大体予想できてそこから逆算できてしまいます。もう少し隙のある伏線でもよかったのではないでしょうか。

第2話 池谷修 30歳 ゆすり屋 死因・?
死因を当てるというのはこのシリーズらしい謎だが、トリックの部分がいまいち。また伏線もわかりやすすぎる。印象に残る短編だけに残念。

第3話 浦田俊矢 34歳 会社社長 死因・撲殺
表題作。非常に大掛かりなトリックだが被害者が推理するという特性を生かして成立させている。ミステリ的には3編の中で一番良いです。


秋にも最新刊が刊行するようです。速筆なのは嬉しいですが、もっと一冊にボリューム感が欲しいなと思うのは贅沢でしょうか。