竹本健治『フォア・フォーズの素数』感想 - 少年の薄暗い感情を描いた短編集

竹本健治『フォア・フォーズの素数』読み終わった。

また竹本健治さんの本の感想かよと思われるかもしれませんが、最近『ウロボロス』の復刊があったためか他の作品も復刊されていたりプッシュされたりしているためで、決して作者本人様にリツイートされて浮かれているというわけでは(いやそれもちょっとあるけど)ありません。

今回はミステリーというよりもSFベースの幻想的な作品が多い短編集になっています。全短編に通底するテーマは少年でしょうか。成長期の内面にある薄暗い感情がよく表現されています。本当は個々の短編について感想を書こうと思ったのですが、どう感想を書けば伝わるのか私の表現力では表しきれず、また山口雄也さんの素晴らしい巻末の解説に引っ張られてしまい自分の言葉で書けない短編があるので、自分の言葉で感想が書けそうな短編についてのみ書くことにします。収録されているのは

  1. ボクの死んだ宇宙
  2. 熱病のような消失
  3. パセリ・セージ・ローズマリーそしてタイム
  4. 震えて眠れ
  5. 空白のかたち
  6. 非時の香の木の実
  7. 蝶の弔い
  8. 病室にて
  9. 白の果ての扉
  10. フォア・フォーズの素数
  11. チェス殺人事件
  12. メニエル氏病
  13. 銀の砂時計が止まるまで

です。

空白のかたち
記憶がリセットされてしまうというのはよく物語の題材に使われるが、本作では主人公が次の日の主人公に宛てて書いたノートという形式でストーリーが進んでいくのが斬新。

非時の香の木の実
タイムリープものだがミステリー的な仕掛けもある。ただエログロ要素が多く苦手な人は多いかもしれない。

蝶の弔い
最後のパラグラフがなければ男の子の可愛らしい話で終わりそうな気もするが、それが強烈な印象を残して幕を下ろす。純粋さというものは一番恐ろしいことを知らしめさせる。

白の果ての扉
カレーの辛さを追求するというそれだけで魅力的な短編だが、辛さが色で表現されているのが面白い。最後の好奇心が恐怖に勝る瞬間もすごく人間らしい。

フォア・フォーズの素数
表題作。4つの4を演算記号を使って1から100の数字を表すゲーム『フォア・フォーズ』をテーマにした小説。数式が短編のほとんどだが面白い。結末で裏技が明かされるところも、こんな単純なことだったのか…という無力感も科学研究にありがちでリアル。

チェス殺人事件
こちらは『囲碁殺人事件』にも収録されていて既読済みでした。竹本健治さんらしい解決?のあるミステリーです。

メニエル氏病
ウロボロス偽書』の作中作のトリック芸者シリーズの短編ですが、なぜか舞台は宇宙空間になっています。しかもトリックは本格らしい外連味のあるアクロバティック。

銀の砂時計が止まるまで
バーミリオンネコシリーズの短編なのですが、ネコはどんな環境にも適応可能という設定を知っていないと物語が理解できないかもしれません。ストーリーはトキが星に残るシーンがかなりサラッと行っていて少し物足りなさがありました。

フォア・フォーズの素数 (角川文庫)

フォア・フォーズの素数 (角川文庫)

師具町の巣羽根邸を訪れた天才棋士、牧場智久と姉の典子。2人が邸宅に到着すると同時に、拳銃自殺と思われる巣羽根の死体が発見される。その時屋敷には、2人の食客が居合わせ、密室状態の部屋のテーブルにはチェス盤と駒が残されていた…「チェス殺人事件」。4に纏わる数式ゲームに魅せられた少年達を描いた表題作、『パーミリオン』の「ネコ」や「佐伯千尋」、「トリック芸者」などのマスターピースが凝縮の短篇集。