早坂吝『誰も僕を裁けない』感想 - 社会派?な上木らいちシリーズ

早坂吝『誰も僕を裁けない』読み終わった。

私の大好きな早坂吝さんの上木らいちシリーズの文庫化です。上木らいちシリーズを簡単に説明するとエロミステリーで、しかもミステリーの副菜としてエロが付属しているのではなく、エロがしっかりとミステリーの本筋に資する、エロミステリーという完成された一品料理です。アホな例えをすれば、ミステリーがカレーで、エロがご飯(おかずなのに)なカレーライスという感じでしょうか。

そして本作では、「本格のルールが現実社会にルールをも侵食し、両者が渾然一体となるような」作品を目指し、社会批判をもミステリーに取り込んで作品を作り上げたとのこと。カレーライスにナンまでついてカレーセットになった贅沢な一品ということで、期待して読みました。

しかし、これは社会派なんだろうか?早坂吝さんもあとがきで、「社会派だとはちっとも思わない読者も多い」と書いていますが、私もその読者の一人でした。作者は「社会という我が物顔に幅を利かせている強大な存在に対して、私と同じような孤独を感じている方には、きっと届くはず」と書いていますが、私はこれに完全に当てはまっていると思うのにもかかわらずです。

まあ確かに未成年淫行で少女側になんの罰則もないのはおかしいと思いますが、それがこの小説で表現されているのかというと疑問です。結末がやけにいい話になっていて、本当にその不条理さを出したかったのなら、もっとブラックな胸糞悪い結末で良かったので?と思ってしまいました。

しかしミステリーとしては、期待通り面白かったです。作者らしくエロ描写がしっかりと伏線になっていて、さらに回る(一応伏せ字)屋敷というオーソドックスな仕掛けを上手く料理して新鮮味のあるトリックに仕上げてあります。ジャガイモやニンジン、タマネギにお肉と、普通のよくある食材でもこんなに美味しいカレーができるんだなと(しつこい)。

例によってエロ描写がたくさんあるので、そういうのが苦手な方は注意してください。気になる方は15ページ目ほどを立ち読みすれば、いきなりエロ描写がありますので、それに耐えられれば最後まで問題なく読めると思います。

あらすじのあとネタバレに関する感想があります。

援交少女にして名探偵・上木らいちの元に、「メイドとして雇いたい」という手紙が。しかし、そこは異形の館で、一家を襲う連続殺人が発生。一方、高校生の戸田公平は、深夜招かれた資産家令嬢宅で、ある理由から逮捕されてしまう。らいちは犯人を、戸田は無実を明らかにできるのか?エロミス×社会派の大傑作!

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

ネタバレになりますが、上木らいちが化粧をせず黒髪お下げだったら魅力的でなくなるという描写は少し残念でした。彼女はすっぴんでも魅力満載であって欲しかった…