二階堂黎人『増加博士の事件簿』感想 - パズルのようなショートショートミステリー

二階堂黎人『増加博士の事件簿』読み終わった。

「大変です、増加博士。事件が発生しました。」
「老体の儂をこんな荒野まで呼び出すことは何事じゃ。」
ジャパリパークへと呼び出された増加博士は、息を切らせながら言った。
「殺人事件です。1人の女性が刺殺されました。」
現場に向かうと、背後からナイフで一突きされている若い女性の死体が転がっていた。
「被害者はかばんちゃん。ジャパリパークで迷子になっていたようです。」
「なにやら、地面に絵が書いてあるようだが。」
「さすが博士。息絶える前に力を振り絞って書いたものだと思われます。」
「ダイイングメッセージというわけか。」
そこには、徳利を持った犬のような絵が描かれていた。
「死ぬ間際によくこんな絵を描けたもんじゃ。これはタヌキじゃろ。容疑者は誰だ?」
「容疑者はサーバルキャットのサーバルちゃん、アライグマのアライさん、フェネックの3人に絞られています。タヌキということはアライさんが犯人の可能性が高いということで、現在身柄を拘束しています。」
「おお、バッカスよ!なんてことをしているのだ!今すぐアライさんとやらを解放してやれ!」
「というと犯人は違うのですか?」
「アライグマはアライグマ科アライグマ属でタヌキはイヌ科タヌキ属じゃ。これは同じイヌ科を示したものだろう。よって同じイヌ科のフェネックが犯人に違いない!」
増加博士は自信満々に言った。

ジョン・ディクスン・カー の生み出した名探偵ギデオン・フェルを彷彿とさせる探偵増加博士が活躍する27編からなるショートショートのミステリー集だが、ミステリーとしては初級のものが揃っている。文頭に私の考えた「けものフレンズ殺人事件」というミステリーを載せたが、27編の多くがこのようなダイイングメッセージものだったり初歩的な密室殺人だったりである。

ただこれはショートショートという文字数が限られているという制約に加えて、掲載誌がパズル雑誌「ニコリ」だったというせいもあるだろう。つまり簡単なパズルとして楽しめる短編集なわけで、あまりミステリーの面白さを期待してはいけないのかもしれない。

ただそれにしても文字の大きい250ページで760円は高いなと思う。最近文庫本もどんどん高くなってきて、本を購入しての読書も満足にできない人が増えているようだが、700円出して2時間程度で読める軽い本を出していては、流石に本離れが起きても仕方ないだろう*1

全ての短編の感想を書くのは面倒なのでいくつか。

ドラキュラ殺人事件
バカミスっぽくて良い。

ペニー・ブラックの謎
エラリー・クイーンの短編をオマージュしたものだと思われるが、こちらの方が解決は自然。

ゴカイと五階
意外なダイイングメッセージといったところか。一発ネタだが侮れない。

嘘つき倶楽部
面白い設定なのに雑学紹介に留まっているのが残念。

謎めいた暗号
ダイイングメッセージ一辺倒でないのは良いけど、警察がそれに気付かないのは…

絞首台美女殺人事件
最後に持ってきているので一番自信作なのだろう。謎は魅力的だが、同系列のネタが作中にいくつかあるので意外性には乏しい。

関係者の眼前に展開する血腥い不可能犯罪に、巨漢の名探偵・増加博士が挑む、本格ミステリショートショート集。ダイイング・メッセージやアリバイ・トリック、密室トリックなど王道の謎から、「人工衛星の殺人」や「物質転送機」といった不条理設定の事件まで、稀代のトリックメーカーによる27の掌編を収録。

増加博士の事件簿 (講談社文庫)

増加博士の事件簿 (講談社文庫)

*1:ノベルス版は1000円近い値段だった