有栖川有栖『インド倶楽部の謎』ネタバレ感想 - 13年ぶりの国名シリーズ

有栖川有栖『インド倶楽部の謎』読み終わった。

※ この感想にはネタバレが含まれていますので注意ください。

火村英生が探偵として活躍する作家アリスシリーズの中でも、クイーンの国名シリーズをパロディーした国名シリーズは学生アリスシリーズと並んで、平成のクイーンと称される有栖川有栖の代表作である。2005年に出版された『モロッコ水晶の謎』から13年もの間新作が途絶えていたが、今回、本作が発売された。『インド倶楽部の謎』は本家エラリー・クイーンが没にしたタイトルということで俄然期待が高まった。

『インド倶楽部の謎』は、前世を信じるインド倶楽部のメンバーがアガスティアの葉*1による予言を受けるシーンから始まる。そしてその後、アガスティアの葉のイベントのコーディネーターが殺され、さらに予言された日時にイベントに参加した女性が殺される。火村と有栖川は、この2つの殺人事件の謎を解くというミステリーである。

著者の有栖川有栖本格ミステリーの旗手だが、国名シリーズではしばしば超常現象のようなものをテーマに書くことが多い。名前は出さないが、以前の短編ではドッペルゲンガーが登場したこともある。今回の作品でも犯行の動機が前世の復讐ということで突飛すぎると思われるかもしれない。個人的には前世の復讐というもの自体が動機なことには否定的ではないのだが、作中の登場人物の言うように、前世を本当に信じていれば来世も信じているはずで、今世で罪を犯さないのではないかという気がして少し納得できない気持ちもある。

予告された殺人事件というのは魅力的な謎だし、それでいて誰が殺したか?というミステリーのメインの謎解きは非常にシンプルで分かりやすい。途中で明かされる入れ替わりトリックは作品のテーマである前世と絡んで上手いなと思った。ただこれを400ページに近い長編に仕上げたのはどうだろうか。トリックやネタ的には短編から中編でも良かったのかなという気がした。火村シリーズにおなじみの野上刑事の内面を掘り下げたり、過去作への言及などシリーズのファンサービスもあって、有栖川有栖ファンには最後まで楽しく読めるとは思うけど、火村シリーズを最初に読むなら他の本がいいかもしれない。

前世から自分が死ぬ日まで―すべての運命が予言され記されているというインドに伝わる「アガスティアの葉」。この神秘に触れようと、神戸の異人館街の外れにある屋敷に“インド倶楽部”のメンバー七人が集まった。その数日後、イベントに立ち会った者が相次いで殺される。まさかその死は予言されていたのか!?捜査をはじめた臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖は、謎に包まれた例会と連続殺人事件の関係に迫っていく!

*1:紀元前3000年頃に実在したとされるインドの聖者アガスティアの残した予言を伝えるとされる葉