カレン・M・マクマナス『誰かが嘘をついている』ネタバレ感想 - 青春群像劇にミステリーの隠し味

カレン・M・マクマナス『誰かが嘘をついている』(原題:One of Us Is Lying)読み終わった。

※ 完全なるネタバレが含まれるので、閲覧には注意してください

サンディエゴの高校で居残りを言い渡された高校生の5人。居残り中に1人が何者かに殺害され、高校生4人に嫌疑がかかる。4人のそれぞれの視点で物語が進行していき、最終的に誰が犯人だったのか明らかになるというフーダニットミステリーである。

容疑者は優等生のブロンウィンと、生活のために薬物売買に手を染めながらも性根は優しいネイト、野球部のエースとして将来を嘱望されているクーパー、上位グループに所属することだけがアイデンティティーなキョロ充のアディの4人で、被害者は学生のスキャンダルを暴くことに情熱を燃やすぼっちなサイモンというふうに、典型的なスクールカーストをなぞっている。

事件に巻き込まれるにつれて4人は自分の秘密と対峙していく。そして周りの人の助けでそれを乗り越えるという青春群像劇のような一面もある。いや、もっと言えばそのような要素の方が強い。なぜならミステリーとしては論理的ではなく、最後に推測と犯人の自白でバタバタと解決してしまうタイプだからだ。

帯には謎解きミステリーと書かれているが、そうではないと思う。「誰かが嘘をついている」のだから、4人の独白を照らし合わせると浮かび上がる矛盾とかそういうものを想像していたら、結局はサイモンの自殺という面白味のない結末に終わってしまったのも不満だった。

そしてその自殺の動機もちょっとイマイチだと感じた。自分の完全犯罪を世に知らしめるためという部分は肥大化しすぎた承認欲求がよく出ていて良いのだけど、「他人の秘密を裏サイトで暴いていて、4chan(日本でいう5ちゃんねる)では暴言を吐いているけど、本当はみんなの仲間になりたかった」というのは、ステロタイプすぎると感じる。筆者の4chanユーザーに対する憐れみが見えるようで、スクールカースト上位の傲慢さを感じるし、トリックの部分で惹かれるタイプの物語ではないので、動機をもっと凝って欲しかった。

本作では4chanをはじめ、NetflixtumblrTwitterなど様々なSNSツールが出てきて、その部分では最近の学生の描写にリアリティーがあるが、結局学生の意見を扇動しているのはテレビというところにも古さを感じる。そこはネットで完結するべきだと思う。実際テレビは大きなメディアではあり、ネットはテレビの後追いとも言われるが、アメリカでもテレビ離れは進んでいて、テレビを懐疑的に観る人も増えている*1

作者の年齢が49歳ということだから仕方ないのかもしれない。あと今のアメリカの高校は本当にセックスやらなんやらでこんなに快楽的なのかと。日本とほとんど経験年齢変わらないと思っていたが。あ、日本も同じだけど自分がそんな高校時代を経験してないだけかあ。

誰かが嘘をついている (創元推理文庫)

誰かが嘘をついている (創元推理文庫)

放課後の理科室で、5人の高校生がルール違反の罰で教師に作文を書かされていた。だが突然、生徒の1人サイモンが苦しみだし、病院搬送後に死亡する。検死の結果、警察は事件性があると判断した。サイモンは生徒のゴシップを暴くアプリを運営しており、ほかの4人は全員が彼に秘密を握られていたのだ。4人は順繰りに事件について語っていく。いったい、誰が何を隠しているのか?

*1:ただ日本と異なり未成年でも参考人の段階で実名報道なのは面白い。日本でこの小説を書くとしたら確実にネットで完結するだろう。