月原渉『首無館の殺人』感想 - 本格らしいガジェットたっぷりの手軽に読めるミステリー

月原渉『首無館の殺人』読み終わった。

四角形のキテレツな建物の中で発生する密室首切り殺人事件の謎を解くというとてもオーソドックスな本格ミステリー。古びた洋館、空を飛ぶ生首という怪奇、幽閉された人物、もったいぶった名探偵と本格らしさがこれでもかと詰め込まれている

それでいて、新潮文庫NEXなのでページ数も多くなくサラっと読み終えることができるので手軽に本格ミステリーを味わえる、と書くと本格ミステリー初心者向けなのかと思うがそうでもない。

本作は首切り死体の扱いが最も問題となるが、ここはオーソドックスな使い方ではない。首切り殺人と言えば入れ替わりだが、本作の入れ替わりの使い方は捻っている。首切り死体の不備を名探偵のシズカが利用して、わざと犯人を挑発したり誘導したりして証拠を得ていくという探偵と犯人のコンゲーム的頭脳戦が途中に組み込まれている安楽椅子探偵とは逆の能動的な探偵とも言える。ここの駆け引きの部分の論理が理解しにくいかもしれない。いまだになんだか煙に巻かれているだけのような気がする。途中で探偵の意図を明かさずに最後に一気に明かしたほうが良かったのではないか?探偵がこういう感じなので、最後も容疑者を一堂に集めて犯人指摘ということもない。

論理が分かりにくいのは文章の所為もあるかもしれない。もう核心なのにもったいぶった言い方をしていて、もうちょいシンプルに言ってくれと思ってしまった。また殺人事件の真相もあまり意外性もなく、首の移動も本気で調べれば一発で判明する方法で、方法が判明すれば事件の全体像がたちどころに分かるので、もう少しトリッキーさが欲しかった

あらすじの後にちょっとネタバレ。

没落した明治の貿易商、宇江神家。令嬢の華煉は目覚めると記憶を失っていた。家族がいて謎の使用人が現われた。館は閉されており、出入り困難な中庭があった。そして幽閉塔。濃霧たちこめる夜、異様な連続首無事件が始まる。奇妙な時間差で移動する首、不思議な琴の音、首を抱く首無死体。猟奇か怨恨か、戦慄の死体が意味するものは何か。首に秘められた目的とは。本格ミステリー。

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

首無館の殺人 (新潮文庫nex)

首切りの動機についてはミステリー愛読者以外の方が気付きやすいかもしれない。「入れ替わりはないのに入れ替わりはある」という構造は面白いのだけど、最初でもう誰かに成り代わらせてるんだなということは薄々気づいてしまう。伏線を削ってでも、もっと意外性があれば。