西村京太郎『殺しの双曲線』感想 - 双子を使ったミステリーの傑作

西村京太郎『殺しの双曲線』読み終わった。

西村京太郎と言えばサスペンスドラマなどでおなじみのトラベルミステリーの第一人者で、鉄道の時刻表のアリバイトリックなどが有名だ。米寿になっても毎月のように本出していて驚かされる。初期の頃は様々な作品を著していた。そして、1971年に発表され、本格ミステリの傑作と名高いのが『殺しの双曲線』である。

ページを捲ると、この小説は双子トリックを使ったものであるという但し書きがまず最初に飛び込んでくる。双子はノックスの十戒によってミステリーのタブーとされているが、それを最初に断っておくことで、あくまでフェアであろうとする信念が感じられる。

ノックスの十戒
双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない

物語は双子のどちらが本当の犯人か分からず警察が逮捕できないということを利用して、罪を逃れつつ連続強盗を起こす双子の兄弟のパートと、雪中の山荘でアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』をオマージュした連続殺人事件が発生するパートが交互に進む。もちろん最終的にその二つが一つに結びつく。

とても良くできている。構成が巧みだし、小道具の使い方も効いている。最近の本格ミステリファンには垂涎ものだが、普通のミステリ読者にはなんのこっちゃ分からんような尖ったものとは違い、誰にでも薦められる。ただ読むときには50年前に書かれたものであることを考慮しておくといいと思う。警察の対応やマスコミの報道姿勢も今とは異なっている。まあ昔のミステリにありがちなように、途中警察があまりに無能すぎるのは置いておこう。

ちなみにこの双子のどちらかが犯人かわからず、強盗犯を捕まえられないというのは、現実に例がある。マレーシアで2003年に違法薬物使用で逮捕されたが、双子の識別ができず絞首刑を免れたというものである(AFP通信)。事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。

あらすじの後にちょっとネタバレ

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

差出人不祥の、東北の山荘への招待状が、六名の男女に届けられた。しかし、深い雪に囲まれた山荘は、彼らの到着後、交通も連絡手段も途絶した陸の孤島と化す。そして、そこで巻き起こる連続殺人。クリスティの『そして誰もいなくなった』に挑戦した、本格ミステリー。西村京太郎初期作品中、屈指の名作。

最後感情に訴えて犯人を自白に追い込むところは個人的には微妙だなと思った。まあ悪は最後に成敗されるという点ではいい終わり方かもしれないが、証拠がないなら犯人には最後まで逃げ切って欲しかった気もするし、もっと良いのは、何か証拠が残して双子のこいつが犯人だと理詰めで確定できるものがあるとよかった。