北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』感想 - ブラックな結末へと反転する鮮やかさ

北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』読み終わった。

短編集。どの短編も、ラストの数行で今までの物語が一転するというカタルシスが味わえる。私が、一番好きなのは『妖精の学校』で、ファンタジーのような世界観が最後の一行で否応なしに現実に飛ばされる。ただのミステリーに留まらず、社会に対する強烈な皮肉が込められている。また、この本に収録されている短編『恋煩い』は過去にフジテレビの特別ドラマ「ドラマ・ミステリーズ~カリスマ書店員が選んだ珠玉の一冊~」で土屋太鳳が主演でドラマ化もされた。

恋煩い
名前も知らない先輩に恋する少女が、学校で噂になっている恋のおまじないに縋るが、おまじないは少しずつ危険な行為に発展していって…という短編。最後の一行がシンプルながらとにかく強烈。

妖精の学校
目覚めると絶海の孤島で妖精として暮らすことになった少年達のレゾンデートルとは。一番好き。ちょっと意味が分かりにくいかもしれないので、ネタバレを含んだ解説をあらすじに後に書こうと思う。

嘘つき紳士
ひょんなことから携帯電話を拾った男が、その持ち主の女から金を騙し盗ろうとするが、その女に恋をしてしまうが…。切ないなあ。自分がモテたことのない人間だから、こういう状況になったら絶対好きになっちゃいそう。

終の童話
人間を石に変えてしまう化物に襲われた村に、石化した人間を治すことのできる人物が現れる。しかしその後、石化した像を壊して回る人が出現して…。最後はリドルストーリーになっている。主人公は最後にどういう決断を下すのか読む人にとって違った結末になるだろう。

私たちが星座を盗んだ理由
表題作。空から星座が消えたのは一体どうやったのかというミステリー。空から星座を消す方法は一発ネタという感じだが、そこに至るまでの物語が切ない。

優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!

『妖精の学校』で最後の20°25′30″ 136°04′11″は沖ノ鳥島の所在地を示す座標である。沖ノ鳥島というのは海の上に飛び出た岩のようなもので、日本はその岩を守るために周囲をコンクリートで固めている。なぜなら、その島がないと日本の排他的経済水域を大きく失ってしまうからだ。しかし諸外国からは岩であり、排他的経済水域を持たないのではと指摘されている。

海洋法に関する国際連合条約においては

人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない

となっている。つまりこの妖精の学校は排他的経済水域を守るために大人の都合で、妖精達をそこに住まわせているということを意味している。これが皮肉でなくてなんだろうか。