北山猛邦『千年図書館』ネタバレ感想 - 優しくて切ないミステリー短編集

北山猛邦『千年図書館』読み終わった。

※ 完全なネタバレを含むので注意してください

『私たちが星座を盗んだ理由』の続編とも言うべき短編集。前作と同様に、最後の数ページで物語の見方が一変するような仕掛けが施されており、その余韻が読み終わった後に強烈に残る。前作からの物語上の繋がりはないので、こちらを先に読んでも問題ない。『星座』の方は割とダークな結末が多かったのに対して、こちらはそうでもなく、優しく切ないものが多いだろうか。好みはあると思うが、一般的には『千年図書館』の方が好きな人が多いかもしれない。

見返り谷から呼ぶ声
これはよくあるトリック。最初の一文でもう気付いてしまった。

十月の放課後、自転車を押して歩く二人の影は不気味なほど長く、あぜ道の先に伸びていた。右にいるのがハカセで、左がユウキ。どちらも小さい頃から僕の友だちだ。

ただし途中の伏線は上手い。最初の違和感がなければ自然と誤認していただろう。

千年図書館
最後の1ページが強烈。だけど、なぜ舞台をフィンランドにしたのだろうか。確かにフィンランドは、原子力大国で、すでに使用済み核燃料を地層処分するオンカロが建設されている国であるが、これはやっぱり福島を舞台にするべきだったのではないかと思う。

多分、北山猛邦さんの心の中には反原発と言うのがあって、こういう警句的なミステリーを書き上げたのだと思うが、日本人に強烈なインパクトを残すのならやっぱり福島じゃないとダメだ。日本人は海外のことは対岸の火事に思う節があるから。色々と大人の事情もあるかもしれないが、小説の力を見せて欲しかった。

今夜の月はしましま模様?
異星人との遭遇。音楽生命体と人間の軽妙なやりとりにクスッとさせられる。探偵が犯人、読者が犯人など意外な犯人の系譜に連なる、新しい意外な犯人かもしれない。

終末硝子
複雑な気持ちにさせられる結末が印象的。早すぎた天才は誰にも理解されないのだろうか。

さかさま少女のためのピアノソナタ
ストーリーはいいのだけど、楽譜をひっくり返したら5分戻るというのに納得がいかない。時間が止まるの反対は5分戻るなのか?普通に弾いたら5分進むんだったら、楽譜を逆にすれば5分戻るのなら分かるのだけど。

ちなみに、作中にある「ベートーベンの話を思い出し」たという台詞は、ピアノ対決時にベートーベンがシュタイベルトの弾いた楽譜を逆さまにして即興音楽を作ったことからだと思う。もっと言えば、楽譜を逆さまにしても音楽になる曲もある(バッハ作曲『蟹のカノン』など)。

千年図書館 (講談社ノベルス)

千年図書館 (講談社ノベルス)

優しく、そして切ない5つの物語。ラスト1行まで何がおこるか分からない!大ヒット“どんでん返し”ミステリ『私たちが星座を盗んだ理由』の衝撃、再び!