P・G・ウッドハウス『ジーヴスの事件簿 才智縦横の巻』感想 - 皇后美智子様がおすすめする英国ユーモア小説

P・Gウッドハウスジーヴスの事件簿 才智縦横の巻』読み終わった。

皇后美智子様の84歳のお誕生日のお言葉で、天皇陛下の退位後に何をするかと尋ねられ、答えられたのが探偵小説を読むこと、そしてジーヴスシリーズを読むことだった。

公務を離れたら何かすることを考えているかとこの頃よく尋ねられるのですが、これまでにいつか読みたいと思って求めたまま、手つかずになっていた本を、これからは1冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています。読み出すとつい夢中になるため、これまでできるだけ遠ざけていた探偵小説も、もう安心して手許に置けます。ジーヴスも2、3冊待機しています。

私も探偵小説(推理小説と呼ばないところに品の良さを感じるが)が大好きだから、畏れ多くも親近感を覚えてしまった。以前、道で偶然、皇后陛下にお会いしたとき手を振ると、振り返してくださったのを今でも鮮明に覚えている。そのころは特別、皇族に対して尊敬の念を持っていたわけでもなかったが、優しいオーラが周りから発せられているようだった。お言葉を聴いて、これは読まないといられないということで、ジーヴスを買ってきたのだけど、ようやく読めた。

ジーヴスの事件簿』はちょっとまぬけなバーティと、それに仕える有能極まりない執事ジーヴスの物語である。いわゆるユーモア小説で、登場人物の掛け合いが軽妙で面白い。特権階級を小馬鹿にしているような描写も多く、20世紀頭の庶民はこのような小説を読んで日常の不満を少しでも解消していたのかもしれない。『事件簿』とあるが、あまりミステリーという感じではなく、ジーヴスの機知を味わうような小説になっている。

最後の短編『バーティ君の変心』では語り手がバーティからジーヴスへと変わっている。それまでジーヴスの正確無比な機械のようで人間らしさがあまり感じられなかったが、この章ではジーヴスの心の中も知ることができて、愛嬌があるんだなと思ってしまった。意外とアニメでリメイクすれば、腐女子が食いつく設定かもしれない。

海外の作品ながら、翻訳も読みやすくスラスラと読めた。部分的に当時の情勢などを知らないと理解できないところもあるかもしれないが、そこは読み飛ばしてもあまり関係がない。価格も手頃で、鞄の中に忍ばせておくとちょっとした空き時間にも楽しめる良い本だと思う。

ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻 (文春文庫)

20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、アガサ叔母は次々面倒な縁談を持ってくる。だがバーティには嫌みなほど優秀な執事がついていた。どんな難帯もそつなく解決する彼の名は、ジーヴズ。世界的ユーモア小説の傑作選。