城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』感想 - 虚構の上に成り立つ論理【祝アニメ化】

城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』読み終わった。

前作『虚構推理 鋼人七瀬』は、虚構の論理で人々を信じ込ませるという興味深い設定で2011年の本格ミステリ大賞を受賞した。その後『虚構推理』は漫画化され、むしろそちらが本編扱いとなり、2019年にはアニメ化も決定している。今回の『虚構推理短編集』は、漫画を小説化したものに、書き起こしを加えたものである。

怪異たちの知恵の神として、トラブルを解決している令嬢・岩永琴子と、その彼氏で不死身かつ未来を決定できるという能力を持つ桜川九郎が、怪異から持ちかけられた謎を解くというミステリーである。『虚構推理』の特徴は、前述した通り、虚構の上に成り立つ論理である。論理的ではあるが全て嘘。嘘を成り立たせるためにも論理というのは必要で、どれだけ尤もらしい嘘をつけるのかというのが面白味になる。

ただ、今回の短編集では部分的に怪異の方にフィーチャーしすぎていて、『虚構推理』らしさが少ない短編もあったのは残念だった。とはいえ、面白い短編もあり、全体的には楽しめる内容だった。また琴子と九郎のキャラクターは、城平京は『絶園のテンペスト』などの漫画原作者としての一面もあるため、オタク受けしそうなもので、ライトノベルや漫画を主として読んでいる人にも受け入れられやすい。『虚構推理 鋼人七瀬』は人を選びそうな印象があったが、『短編集』は、ミステリー好きにはもちろん、そうでない人も満足できる間口の広い小説になっているだろう。

以下、各短編の感想を書く。

ヌシの大蛇は聞いていた
『虚構推理』らしい、それっぽい論理を積み重ねて納得させるというプロットになっている。謎自体は小粒なように見えるが、出てくる結末が鮮烈で印象的。

うなぎ屋の幸運日
前半パートの、なぜうなぎ屋でビスクドールのような可憐な少女が一人で鰻をかっ食らっているのかを2人で推理するパートは面白かった。そこからアクロバットに飛躍して、罪を追及するという流れも外連味があって良い。ただ、琴子が罪を追及するところは、怪異頼りというところが否めず、イマイチ。

電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを
なんだか急にバトル小説みたいになってしまっているが、九郎が大活躍する短編ということで、こういうのもあっても良いのかなとも思う。

ギロチン三四郎
ギロチンの元に招き猫というビジュアルにまず惹かれる。虚構推理ではなく、普通の推理となっているが、その推理自体はシンプルで美しい。さらっと読み飛ばしてしまうところに伏線が潜んでいる。

幻の自販機
『虚構推理』らしいと言えばらしいのだけど、ありもしない共謀者をでっち上げられるのは、その人にとっては堪ったもんではない。妖怪のためとは言え、他の人間を犠牲にするような嘘はいかがなもんかと思う。

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。―「ヌシの大蛇は聞いていた」山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。―「幻の自販機」真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!