服部まゆみ『この闇と光』感想 再読するとガラリと印象が変わるミステリー

服部まゆみ『この闇と光』読み終わった。

この小説をネタバレせずに紹介することは難しい。多少のネタバレを恐れずにいうのであれば、王女レイアとその父である王、そして意地悪なダフネの3人が織りなす耽美なゴシック小説、かと思いきや中盤から終盤に書けて物語が何度もガラッと変貌していく。読み終わった後に再び最初からページをめくると全く違う光景が見えてくるというミステリーである。

本作は直木賞候補作にもなっている。その選評では、ミステリー部分が蛇足だと意見が多かったが、これは審査員がみんな高齢者のためにミステリーの良さというものを理解していないためである。しかし、それとは別にして、内容は説明した通りなのだが、そのトリックは割と分かりやすい。伏線がかなり大胆に配置されているのでおおよその見当は読んでいるうちについてしまうと思う。実際、話の全貌も想像していたものとは大差なかった。

したがって、ミステリーに慣れ親しんだ人がミステリーを期待して読むと少し肩透かしを食らうだろう。ただやはり、この小説の真価は耽美的なゴシック小説であり、レイア姫の内面描写である。成長していくにつれて、レイア姫は急激に大人びていく。その世界を侮蔑したような達観したような考え方は、幼い頃に(伏せ字)誘拐(ここまで)された子供のリアルなのかもしれない。

しかし私には想像力がないので、レイア姫のことが好きになれなかった。前半はあまりに幼すぎるように書かれているような気がするし、後半は子供らしからぬこまっしゃくれた言動で読みながら苛々としてしまった。ゴシック小説とミステリーが好きな方にはオススメできると思う。

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!