加藤元浩『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』感想 本格ガジェット満載の長編ミステリー

加藤元浩『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』読み終わった。

※ 読むと真犯人が途中でわかってしまう恐れがあるネタバレが含まれているので注意してください

作者の加藤元浩は漫画『Q.E.D.』シリーズの作者で、最近は小説家としても活動している。本作は元アイドルで刑事の七夕菊乃と、捜査官の深海安公が活躍する『捕まえたもん勝ち!』シリーズの3作目である。ちなみに私は、他の『捕まえたもん勝ち!』シリーズを読んだことがない。しかしながら、なんの問題もなく読むことができた。前提知識はほとんど必要ないので、本作から買っても問題ないと思われる。

さて、本作には孤島での殺人事件、密室殺人、見立て殺人、田舎の伝承など本格らしいガジェットをこれでもかと押し込まれている。否応無しにも期待が高まるのだが、ミステリーとしては少々残念なところがあった。

まずは真犯人がめちゃくちゃ分かりやすい。なぜなら1人だけ異常なほど怪しい行動を繰り返しているからだ。それ自身もトリックの一部ではあるのだが、読者から見ると、こいつを怪しんでくれとしか思えず、結局その人物が真犯人なので、意外性が全くと言っていいほどない。そして、メイン要素ではないとは言っても、密室の謎などは途中でサラッと解かれてしまって、カタルシスがあまりない。謎解きも文章だけでは少し分かりにくいところがあったので、せっかく漫画家なのだから、図解などを付けてくれると嬉しかった。また推理も少し憶測に近いところが多かった。もう少し単体の事件それぞれに手がかりなどを残しておいても良かったかもしれない。

しかしながら、漫画家だけあってキャラクター造形は親しみやすいし、主人公の菊乃も可愛らしい。現場の刑事とキャリア組の出世競争も先が気になる。また文章のリーダビリティも高いので、かなり長い小説だがサラサラと読んでしまえるだろう。

キャラクターをメインに置いたライトミステリーとしては十分すぎるほどの内容で、むしろ重厚すぎるかもしれない。加藤元浩さんの漫画を読んでファンになった方にはきっと楽しめるものではないか。

元アイドルの捜査一課刑事・七夕菊乃と変人捜査官・深海安公がバカンスに出かけたのはかつて不老不死研究が行われていたという“奇科学島”。このいわくつきの島で連続殺人が発生した!ところがこの事件、殺された被害者が生き返りもう一度動いたとしか思えない不可思議な痕跡ばかり。不老不死人間が実在したとしか思えぬ事件の真相とは?孤島、不穏な旧家、不可能犯罪、マッドサイエンティスト―人気ミステリ漫画の著者が「小説でしかできない」と語る謎てんこ盛りのミステリワールド!